秘密のMelo♪y④*ウィーン編㊦*
――シュンサイド――
『ごきげんよう』
『あら、ごきげんよう。お久しぶりですわねぇ』
『ねぇ、本日は真裕様がお見えになるって本当かしら?』
『なんでもあのご婚約者様をお連れだとか』
『一部ではもうご結婚なされたとの噂もあるようですわよ』
『まあ! 噂だなんてはしたない。そんなものに耳を傾けてはいけませんわ』
『そ、そうですわね…』
「な……何語…?」
「いや、ドイツ語…やろ? …おい蓮二、お前分からへんのか?」
「生憎…僕は学校で習うことしか勉強しないんだよ。よって、英語以外はてんで分からない」
「…分からんのなら胸張って言うなや」
類は友を呼ぶという。
あれはまさしく本当だ。
マヒロが面白い面白いとコイツらは言うが、自分達も負けちゃいない。
なんでこう、本人達がいたって真面目に話しているのが笑えるんだろうか。
「心配しなさんな。俺は日本語もドイツ語も話せる」
「おお、ウィーン版かっくん!」
「ねえそれ…むやみやたらと言わないほうがいいわよ。本人の前で口滑らせてみなさい、殺されるから」
「…せ、せやな…」
会場に入ってほんの数分。
日本人組は言葉が分からないせいか、妙に挙動不審だ。
…といっても、この二人だけなのだが…。
あのレンジというやつはどうも落ち着いているな。
確かマヒロが「蓮くんは得体が知れない!」と言っていたっけな。
俺にゃ意外と……ただ淡白なだけに見えるがなぁ。
左手で顎をさすりながらレンジをじろじろと見まわした。