記憶のつぶ
「いいじゃないっすか!」
泰智と由里が色々話をしている横で、俺と由里の彼氏はボーと突っ立っていた。
しかし由里の彼氏は早々と痺れをきらし口を開いた。
「由里。そろそろ‥」
「あ、うん。」
じゃあね、と別れ際だった‥
「裕一郎。」
由里がいつになく真剣な顔をしていた。
「朋、まだフリーでいるよ。」
「…そうか‥」


「朋さん、かわいいっすよね〜中学から超モテまくってましたよね。」
「そうか。」
「裕一郎さんと超似合ってましたよ。」
「………」
俺がどうでるか、泰智が伺っているのがよくわかった。
「便所行ってくる。」
「裕一郎さん!!」
「…女は当分いいよ。」

俺の返事は人込みに溶け込む。

じゃ、なんで幸の事諦めてないんだよ。
自分に自分で問いかけ苦笑した。

間もなく携帯が鳴る。
「便所すっげー混んでてまだできてな、い‥」
なん、だって?
泰智の話を聞き返す前に走り出した。何人かにぶつかったがそんなのお構いなしに泰智の元へと急いだ。

いや、

『幸さん!今、目の前にいます!!』

幸の、元へと。
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