記憶のつぶ
「俺達はなにもないですよ。昨日初めて同じ部屋になりましたが、なにもないんですよ。」
克哉が少し苦笑したように見えた。



おじさん、おばさん、幸が見送る。

幸の不安な顔…

まるで母親に置いていかれる子供の様だ‥

克哉は幸を見ていない。

車を発車させた。



克哉が携帯をいじる。

何を見ているのか‥
何も見ていないのか‥

ため息がもれる。

「そういえば、いくつなんですか?」
「え?」
驚いた様に顔を上げた。
「歳。」
「あぁ‥同い年です。」
「俺の歳いいましたっけ‥」
「ユキと同い年です。」
「あ、あぁ〜」
同じか、


ブルルル―‥
誰だ?

―朋―

「いいですよ。停まって出られたら‥」
「もぅ駅ですから、後でかけ直しますよ。」

暫く震えていた。



「もぅ入ってきますよ。これを持って入ってください。乗ったら車掌から切符を買ってください。」

バタバタと改札を入る。

「じゃ俺はここで‥」
中まで行く必要はないだろう。
「あ、ありがとうございました。お世話になりました。」
「こちらこそ。」

克哉は走って行ってしまった。


「ん?」
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