記憶のつぶ

ピンポーン―‥

「はい‥」

出てきたのは、おばさんではなく幸だった。

俺の顔をみるとちょっと困ったような表情をみせた。

あの日以来会っていない俺はどんな風に受け取られているのだろう‥


そもそも俺達の関係はなんなのだろう‥‥
彼氏彼女はどうなっているんだろうか。
俺達が解らない以上そんなのは白紙か―‥
なんかまじまじと考える俺、笑える。


「おばさんは?」

「出かけてます。」

沈黙‥

だけど幸は俺の顔をマジマジとみると沈黙をやぶった。

「どうぞ、あがってください。」

「いや、でも、」

なんだか幸一人の所には気が引けた。

前はなんてことなかったのに‥

「汗、凄いですよ。冷たいもの飲みませんか?

それに‥話あるんですよね?」


俺は頷くと意を決して扉をくぐった。


玄関にはこれから送るであろう荷物が置いてある。
ちらっと見えた名前に、再度胸が鼓動した。
まだ何も気づかれないようにリビングに入る。


前と変わらない見慣れた一室。


幸がキッチンで用意をしているのだろう音。



ふと

一年前に戻った感覚に襲われる。
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