記憶のつぶ

コトン―‥

はっ‥‥

カラン―‥


「どうぞ。」

やっぱりよそよそしい態度が現実に戻される。


飲もうと手をだした瞬間、携帯がなった。
泰智だった。

「ちょっと、ごめん。」

廊下にでてボタンを押した。

『裕一郎さん!!どこ行ってんすか!!
どこでサボってんすか〜?』


思わず何も言わずに出てきてた‥

「わりぃ‥もぅちょいしたら戻るわ。」

寛大な会社でよかったわ‥

戻ると幸が心配したような顔をしていた。

「‥大丈夫ですか?」

「あぁ。」

気を取り直して麦茶を飲む。
自分は思っていた以上に喉が渇いていたらしい。半分以上飲んだ。

「おかわり入れますね。」

チッチッチッ‥

こういう時ってなんで時計の音、やけに耳に付くんだろか‥


「いつも家にいるのか?」
「たまに母が連れ出してくれます。」


‥会話が続かない。
言い出せない。
言ったらどうなるんだろう‥

何か思いだすだろうか?

何もなく『そうなんですか‥』って言われるんだろうか。


「そういえば、母と出かけた時、朋さんって方に会いました。」

「へ?」

沈黙をやぶったのは幸。
それも話題は朋。
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