記憶のつぶ
「前に付き合ってた‥
克哉さんと‥‥」
呪文のように繰り返す。
そして考えるように俯いた。
「‥なんで、別れたんですか?」
言いたくない。
知らないでほしい。
「あの!何があっても受け取る覚悟は出来てるんです。教えて下さい。」
真っ直ぐな瞳に、一点の曇りはなかった。
「‥‥‥‥‥‥‥
暴力だよ。
ボコボコにされて幸は地元に帰ってきた。
奴は追って来る事もなかったけど、幸は怯えてた‥しばらくは見ていられなかった。でも何ヶ月かして落ち着いて静かに暮らしてたんだ。
友達に会うって東京に行った時なにかがあったんだと思う。」
元気過ぎて油断してた。
嬉しそうな笑顔がもっと見たくて送り出した。
なのに‥
「‥‥幸?」
「幸?!」
ガタガタと震え出した。
「幸!!」
やばい。
救急車‥
電話!!
「幸!!!!!」