狼と兎~a childhood friend~
するとさっそく聖が家から出て来た。
「おし、来た!」
「梨空ちゃん、頑張って下さい!」
「出撃!」
あたしは聖の前に立ちはだかって、両手を精いっぱいに広げた。
「聖!」
「なっ…いきなり出てくんなよ…ビビるだろ…」
「今日、一緒に行こう!」
「…は?」
「一緒に行こう!」
「…お前、もう一人で行くっつってただろうが」
「なんだか急に聖と一緒に行きたくなったの!」
あたしはこのセリフを言った瞬間、自分で言ったのにも関わらず、吐きそうになった。だけど、あたしは頑張ってこらえた。
「……」
「一緒に行こう!」
「お前が行きたきゃ勝手にしろよ…」
「ありがとう!」
あたしは棒読みで聖にそう言い、聖の腕を引いて歩いた。
「おい、何でそんなに急いで歩くんだよ」
「なんとなく!」
「何だよ、なんとなくって。まだ時間あるだろ」
「聖!」
あたしは立ち止まり、聖の方を向いた。