狼と兎~a childhood friend~
「……いい」
あたしはそれだけ言って自分の部屋に鞄を取りに行った。
あたしのお父さんとお母さんは気色悪いほど仲がいい。
そして特にお母さんは一人っ子のあたしを弱愛してる。
いわゆる親馬鹿ってやつ。
そのせいで中学の頃の授業参観はビデオカメラ持って二人で毎回来てた。
そのたびにあたしは恥ずかしい思いをしてた。
しまいには幼馴染の……幼馴染と思いたくないけど……幼馴染の聖にからかわれたりもした。
その時からだ。あたしが短期になったのは。だから学校では皆あたしを刺激しまいと話しかけてこない。少しでも刺激するとあたしがキレるから。
まぁそっちの方が人間関係とか面倒な事にならなくていいんだけど。
あたしは玄関に行ってローファ―に履き替え、家を出た。
そしてあたしは家を出て三秒でキレそうになった。
「おっせーんだよ。どんだけ待たせりゃ気が済むんだ、お前は」
あたしの目の前には家のブロック塀に腕を組んでもたれかかってる聖の姿が目に入った。
「あたしがいつお前と一緒に行くなんて言った…」
あたしは拳に力を込めた。
「何言ってんだお前。昔から一緒に行くって決めてただろ。……親が」
「お前はまだ親の言う事聞いてんのか!だいたい、あたし昨日お前にはっきり言ったよな?!『明日から一人で行くから』って!」
「…言ったな」
「なのに何でお前がここにいるんだよ!」
「だからそれは親が……」
「お前はマザコンかっ!」