Innocent shine―光の道しるべ―
「うん……そうかもね」



つられて、悠希もちらりと後方を確認する。


夕暮れの道路に、背の高い影が遠ざかっていくのが視界の片隅に映った。



「でも、わたしはそんなに好みじゃないかなぁ」



ほくほくとした笑顔を浮かべる美緒には、悠希の答えは不満だったらしい。
形のよい小作りな眉をしかめて、口を尖らせる。



「えーっ、悠希ったらちょっと見とれてなかった?まったく、理想が高いんだから」


「そんなことないってば!好みか好みじゃないかと言われれば、そんなに好みじゃないってだけの話」



確かに綺麗な顔立ちをしていた。見惚れてしまったのも事実だ。
逆に、整いすぎているとさえ感じて、もはや好み云々の対象としてさえ考えられなかった。



――ただ。



ただ、年齢は自分達とさして変わりなさそうなのにも関わらず、あれほど澱みなく謝罪の言葉を口にできることには驚いた。



(人にぶつかったって、相手に聞こえないような大きさの声で「すんません」って謝るとか、最悪謝らないような男しか知らない気がする)


わたしの知ってる男の常識がなさすぎるだけかな、そんなことを思って、悠希は内心苦笑した。



「じゃあ悠希、明日は寝坊しちゃダメだからね。11時に待ち合わせだよ」



いつもの交差点で、美緒が笑って手を振った。


色素の薄い髪が夕日に照らされ明るく輝いている。



「もちろん、まかせて」



悠希は親指を立ててみせた後で、別の方向へ帰る親友に「また明日」と手を振った。




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