世界で1番君が好き
私は京君に一言も喋らせず、逃げるように去った。

外は雨がしとしとと降っていて、濡れたアスファルトのむせるようなにおいがした。

雨と涙で濡れた私は誰もいない通りまでくると、仮面を投げ捨て、声をあげて泣き出した。

父が出て行き、母が泣き崩れている頃に必死に泣きたいのをこらえて、明るく振る舞い、母を慰めていた時のしょっぱい気持ちを思い出しながら。

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