孤独の空
ふと目をやると斉藤の腕にうっすらと
血が滲んでいた。多分私が放り投げた
時に擦りむいたのだろう。「斉藤一、
腕見して」「一でいいよ。どうした?」
斉藤の腕を見るとやっぱり血が出てる。
しかも結構痛そう。「んぁ。擦り傷
できてるー。いつできたんかな」
この期に及んで天然で押すつもりか?
でも今回は本当に私が悪いし、仕方が
ない。「手当てするから椅子に座れ」
「いやー、いいよ。こんなの放置
しとけば自然に治るし」「だー!!
その考えが甘いの!私が治療してやる
って言ってるんだから黙って治療
されやがれー!」私の剣幕にやれやれ
といった感じで斉藤は椅子に座った。
大体保健室にあるものと場所はわかる。
長年(といっても1年半ほど)過ごした
場所だから。消毒液とガーゼを用意。
斉藤の腕を触る。「痛くても我慢して」
「んー・・・できればね」「絶対して」
「わかったわかった」消毒液を傷口に
垂らすと斉藤は少しビクッとした。
「・・・痛い?」「少し」「我慢だよ」
丁寧に消毒すると、ガーゼを貼った。
斉藤の腕は、女子と同じくらい綺麗
だった。どうやって手入れしているのか
聞きたいくらい。「終わったよ」
そういっても何も返ってこないし、
動きもしない。「斉藤?さいと・・・」
顔を上げて斉藤を見るととても、
悲しそうな顔をしていた。それはまるで
何かを思い出しているように。儚い物を
追い求めるような目をしていた。
「あっもしかして終わった?ありがと」
「うん・・・・」
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