【2】口内炎バトル
「意味が解らん」
「解るように説明してやる」
「当然だ」
「教えてやろう」
「もったいぶるな」
「それでは、この口内炎ファイターの知識を授ける」
「すまないな」
「いや、構わんよ」
「早く話せ」
「そうだな」
 いつまでも続きそうだったので、誠治の方が危機感を抱いた。このまま話していては、ラチが開かない。卓也の家に着いてしまうではないか。
「もう一度、見せて」
 卓也は面倒臭そうにみせた。
「三つの口内炎がある。大きくなって、繋っている」
「しょれで(それで)?」
「三つ繋がれば只のトライアングルだ」
「ふむ」
「しかし、卓也のはスペシャルだ」
「すへしゃる(スペシャル)?」
「口内炎の中に、島が出来ている」
「島?」
「アイランドと呼べ」
「お前が島って発音しただろ」
「口内炎に囲まれた孤島。今のお前のいる場所だ」
 卓也は唇を戻した。少し引っ張っているだけで、痛そうだった。
「その島が白い海に沈む時だ」
「沈む時がどうした」
「その時がクライマックスだ」
 誠治は興奮気味に言った。
「要するに、すこぶる痛いってことだな」
「そうだ。ところで、そろそろ話してくれないか。何で麻婆豆腐って言ったんだ?」
「好きなんだよ」
「桃子か」
「桃ちゃんもそうだが、この場合の答えは、麻婆豆腐の方だ」
「妹を麻婆豆腐と一緒に論じるな」
「誠治の聞き方が悪いんだろう」
「染みるのが解からなかったのか?」
「いきなり告白されて、舞い上がったんだ」
「お前らしくもない。卓也は沈着冷静ではなかったのか」
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