ゆめ
重圧と絶望
私の体は子供が産めない…
お医者さんにそう言われて目の前が真っ暗になった。
旦那になんて言おう…
親には…
私はひとり娘。親に孫を見せてあげられるのは私しかいないのに…
会う度に「孫はまだか」と楽しみにしていた。
言ったらきっと、がっかりするのだろうな…
「健太さんと喧嘩でもしたの?」
「そんなんじゃないわよ、ちょっと寄ってみたの」
「そう。それならいいけど。あらおいしそうなみかん。もらうわね」
言えない…
もう孫は見れないんだよ、なんて…
言えない…
「今日山口さんがお孫さんとみえてね」
「ふぅん…」
「山口さんったら、かわいいかわいいって、あれじゃババばかね」
母はいつも羨ましそうに、お友達やご近所さんの孫の話をする。
周りはみんな、孫がいるものね…
言えないよ…
「…じゃ帰るね」
「あら、もう?お父さんもうすぐ帰ってくるのに」
「よろしく言っといて」
「わかったわ。…あ、帰ってきた」