ゆめ
そう呼ぶ声が聞こえ、ぱっと振り向いた。
「さつき、そんなに走ったら転ぶよー」
「きゃはは、ママ早くー」
ゆめじゃなかった。
神様がくれた夢はあっという間に覚めてしまったのか…。
私は…子供産めない…
また暗い渦にのまれそうになってきた…。
「亜紗子!おまえも来てみろよ!」
健太が戻ってきて、私は慌てて涙を拭いた。
「な…なによ、そんな気分じゃな…」
「いいから」
健太は構わずに私を引っ張っていった。
「おおー!はっはっはっはっはっ」
盛り上がる人だかりの向こうにあったものは…
動物つかいのおじいさんが、猿と小さなショーを……
「…ゆめ!」
「はっはっはっはっはっ…」
ゆ…ゆめが猿と一緒にパフォーマンスしていた…。
「ははは、ゆめってば猿より目立ってやんの」
「笑ってる場合じゃないよ!…おじいさん、迷惑そうだよ!?」
「そうか?」