ゆめ
夢と希望
「みつけないと、あんな小さな子が暗い夜道できっと泣いてる…!」
健太は首をふり、私の腕を離さなかった。
「なんで!?」
興奮している私を、健太は抱きしめた。
こんな時に冷静で、何考えてるんだ…?
そして、健太はなんで私を責めないんだろう?って不思議だった。
それは健太が優しいから…
それだけじゃなかった。
「ゆめ…捜してる途中でさ、お義母さんに会った」
「え…ゆめ、お母さんとこに…?」
「いや…。ちょっと前までいつも言ってただろ、それ言ってた…」
「………!」
それは…孫を見せろ…?
ゆめが居なくなった途端、母の錯覚も治っていた。
翌日、実家へ帰ると…健太が言ってた通りだった。
「田中さんとこはもう5人目のお孫さんが生まれたそうよ、いいわねぇ」
「いいなぁ。羨ましいなぁ」
うっ…久しぶりのこの感覚。
父と母の中からはゆめという子の存在は完全に消えていた。