ナルシー少年☆蛍斗くん
見守る〜ホントの気持ち〜
上の部屋から灯りが漏れている。
ツーンとはりつめた秋夜の独特な空気に、私はハァと白い息を洩(モ)らした。
蛍斗はきっと私の部屋だ。
なんて切り出そう。
冷たい風が吹いて、見上げていた顔を俯かせ、首を竦(スク)ませる。
後1歩を踏み出せば、自然と家に入れるような気がするのだがその1歩が踏み出せない。
ずいぶんな時間、立ち往生していた。
もうずっとこのまま動けないんじゃないかと思ったとき、私の部屋からシャッとカーテンを引く音が聴こえて、そしてそれに続くように窓が開けられる音がした。
「なにしてるの?」
聞き間違えようのない蛍斗の声。
「別に、」
蛍斗に会うのが気まずかったなんて言えないから、なんとなくぶっきらぼうに答えてしまう。
「そう。」
私って嫌な子だ。
せっかくの会話も途切れて…
「矢恵?」
え?
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