ナルシー少年☆蛍斗くん
「ねぇ。行こう?」
「・・・・・・。やめろ!!」
ヤツの手を振り払い、おもいっきし顔を背ける。
奴の攻撃をまともに受けたら駄目だ。
無駄にいい顔には毒がある。
ほだされて許してしまうだろう。
「・・・・・・。」
「・・・矢恵?」
蛍斗はゆっくりと腰に手をまわしてきた。
さっき打ち付けた場所が少し痛む。
どさくさに紛れて!!
「離せ!!」
そう言うつもりだった。
だがそれよりも先に奴は私を自分の中に包み込む。
突然の蛍斗の行動にカァッと頭に血が上る。
ふざけているのだろうか。
私はただ謝ってほしいだけなのに。
暴れだしたい衝動に駆られるが、蛍斗の様子を窺(ウカガ)うと、さっきまでのふざけた雰囲気も、ごまかすような表情もなくて。
逆に固まってしまう。
「・・・ごめんね?」
耳元でそっと囁く優しい声にハッと我にかえる。
何かの呪縛から解放されたかのような感覚にホッと安堵(アンド)すると同時に
“えっ!?”
私はやっと蛍斗の『ごめん』を認識することができた。
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