ナルシー少年☆蛍斗くん
奴の力は強まるばかりで、しかも今まで以上に顔が近づいた時、
「蛍斗ぉー!!矢恵ー!!もう出る時間過ぎてるわよー。」
横着をして下の階から叫ぶ母さんの声が聞こえてきた。
「みっち〜。空気読めよ〜」
いや、母さん。
ナイスタイミングです!!!!
これほどお母さんに感謝する日がこようとは・・・
奴は名残惜しそうに私から離れ、私のバッグに物を詰め込んでいる。
私は苦しさと恥ずかしさで息も絶え絶えになりながらも、その様子にいちゃもんをつける。
「そ、そんなに入れたら重いから!!!!」
「必要最低限の物しか入れてねぇよ。・・・お前さぁ、一応女なんだか」
「あ゛~。もういいや、行こう?」
私はわざと明るくそう言い、バッグを引ったくって部屋から飛び出した。
さっきの雰囲気を打ち消すように。
なんともなかったと証明するように。
おさまらない鼓動を気取られないように。
これは絶対に違うのだから。
その時の私はまだ気づいてはいない。
私の心は蛍斗に近づくほど頑なになる。
そういうふうに進化していた。
蛍斗とは相容れないものだったんだ。
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