心詩 ー モウイチド、モドレルノナラ ー






「――――…は?」


開いた口が、塞がらない。

…ウソでしょ。


私は今聞いた深紅の言葉をもう一度、反芻する。


『告ったの、雅からだってさ』


一瞬、深紅が何を言っているのか分からなかった。


けれどだんだん、意味が飲み込めてくる。


告ったのが、雅?

桃香じゃないの?


…それじゃあ。

それじゃあなんで。


「あんなこと言ったの……?」


目の前が真っ暗になる。


呆然とした顔で固まる私を見て、頭のいい深紅がすぐ何かあったと悟ったのだろう。


「今日放課後、うちおいで」


心配しているようで、有無を言わさないような深紅の口調に、私はただ頷く。


知ってるから。

…これは、深紅なりの優しさなんだって。


深紅は私の頭をポンポンっと叩くと、自分の席に戻っていった。



教室に先生が入ってくる。


実際、先生の話しなんか頭に入って来なかったけど、でも一時でも雅のことを考えたくなくて、忘れたくて、必死に教科書と向き合っていた。



それだけが、私にできる

唯一の抵抗だったから。



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