心詩 ー モウイチド、モドレルノナラ ー






絶望は、大きくなる






ある日の放課後。

職員室に用事があった深紅を教室で待っていた時だった。


―ガラガラ―


急に教室の後ろのドアが開き、ビクッとして振り向く。


あ……。


「―――――…雅、じゃん」


ぎこちなく名前を呼ぶと、ふっと綺麗な笑みが返ってきた。


「何、その顔。…幽霊だとでも思った?」


夕日に当てられたその笑顔は、いつも以上に輝いていた気がした。


…見とれそうになる自分が、悔しい。


慌てて目を反らして、ふんっとそっぽを向く。


「そんなわけないじゃん」


…ほんっと私、可愛げないなぁ。

自分がイヤになる。


「永遠、何してたの?」

「深紅、待ってる」

「ふぅん」


相槌を打ちながらながら、雅は自分の机の引き出しをゴソゴソしだす。


「雅は?何してんの?」

「んー?俺は忘れ物…――あった」


そう言って、雅が私に見せたのは、携帯。


「…携帯忘れるとか馬鹿じゃん」


…憎まれ口しか叩けないのか、私の口は。


「ちっせーから忘れんだよ」


雅は携帯をズボンのポケットに押し込みながら苦笑した。


その表情にも見とれそうになる自分は、そうとうヤバいと思う。






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