心詩 ー モウイチド、モドレルノナラ ー
「深紅、まだこねぇの?」
「たぶん。遅くなるかもって言ってた」
「…そか。じゃあ……」
そう言って、私の席のとこまで来て、隣の席のイスを引く。
「何…?」
「一緒に待っててやるよ」
「……は?」
笑顔を浮かべ、私を見る雅を唖然と見つめる。
何言ってんのこいつ。
「…嫌だった?」
そう言って、首を傾げる雅はやっぱカッコいい。
イヤ、かなり嬉しいけどもさ。
ほら、あんた。
女いるじゃんよ。
どうせ外でまたせてんじゃないの?
私は小さくため息をついて、雅から目線を逸らしながら、言いたくもないことを言う。
「彼女、待たせてんじゃないの?」
言ってから、やっぱ言わなければよかったとすぐ後悔する。
…彼女なんて一番認めてないのに。
ずっと別れればいいって思ってるのに。
2人の幸せを促すようなことを言ってしまう。
それはやっぱり、私が雅の幸せを願っているからかな。
桃香は好きじゃないけど、やっぱ雅には笑っててほしいからね。