【短編集】闇に潜む影
「これ以上私にかかわるな」
「ぐる・・・。たすけ・・・」
「返事は?」
「・・・」
「聞こえない」
「・・・」
彼女の口から、舌が飛び出してきた。
急激に青白くなっていく顔色が、私にはとても滑稽に見えた。
「これ以上私に関わるな。返事をしなければこのまま殺す。早く返事をしなよ」
「・・・」
「返事をしないんだ。じゃあ、殺す」
私は自分の両手に、今まで以上の力を込めた。
それまでの仕打ちを、思い返しながら。
私が、パッチリ二重で背も高く痩せているのに嫉妬しているくせに。
私の化粧と香水のセンスが良いからうらやましいくせに。
私が、アンタの好きな男の子から告白されたのが気に入らなかったくせに。
私が澄ましているから、ますます頭にくるくせに。
アンタなんて、どんなに足掻いても、私を超えられないんだよ。
それなのに、
あることないこと言い触らして。
皆に仲間外れされるようにしむけて。
親が買ってくれた大切な教科書を、ノートを、はさみで切って使えなくして。
机の上に花瓶を置いて。
時には、変えられていない花瓶の水を、私の体操服にかけて。
どんなに惨めだったか。
どんなに悔しかったか。
何度、アンタを殺したいと思った事か。