【短編集】闇に潜む影
ドアがパタン、と閉まる音がする。
そこに寄りかかったまま、私は下を向いて必死にこらえた。
だけど、限界だった。
「・・・くく、・・・あはは。・・・あはははは!」
廊下をすれ違う生徒たちは皆、私を遠ざけるようにして歩く。
だけど、もう我慢できなかった。
あまりに滑稽で、あまりに陳腐で。
腹から湧き出てくる笑いを、かみ殺すことはできなかった。
廊下中に響き渡る私の笑い声。
廊下中に響き渡る私の足音。
皆が私を避け、皆が私と目を合わせない。
でも、それはすごく気持ちが良かった。
「あはははは!あはははははははは!」
これまでは、軽蔑のまなざしだけがあてられた。
でも、今は、皆が畏怖の目で私を見る。
これまでは、無視されてきた。
でも、今は、仕返しが怖くて声がかけられない。
これで良い。
これが良い。
とても、愉快だ。