【短編集】闇に潜む影


「・・・ん・・・」


閉じた瞼に感じる日の光に、私はうっすら目を開ける。


朝だ。


朝が来たんだ。


上半身をゆっくりと起して、窓の方に顔を向けた。


昨日はカーテンを閉め忘れていたのだろうか。


ベッドから降りて、窓辺へと歩く。


朝が来ている。


生きていれば当然のことで、


これまで幾度となく朝を迎えてきたのに、


何故かそれはとても新鮮に感じられた。













「・・・あたたかい・・・」


窓辺に出来た陽だまりの中で、私は思い出していた。


昨日、出会った彼のこと。


そして、右手に感じた温もり。


今感じる温かさは、昨日感じた温もりに似ている。




「古田くん・・・」





彼の名前を口にしたとき、ふと、窓辺に青い鳥がとまっているのが見えた。


昨日、病院の屋上で飛び降りようとしたときに見たそれと同じかは分からない。


ただ、あの美しい青色と同じ色を纏うその鳥は、


人間が傍で立つ窓辺で、美しい声で鳴いていた。


「・・・ありがとう」


私がそう言うと、その鳥は羽根を広げて、高い青空へ飛んで行った。


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