【短編集】闇に潜む影
天国と地獄の間
「えーっと、今日は古田耕一君ってことになってるんだけど、キミは古田耕一君かな?」
「!?」
「初めまして」
「え、ちょ、え、な、なに!?」
俺はさっきまで夜の道を一人で歩いていたはずなのに。
夜空に浮かぶ星座を見ながら、ぶらぶらと歩いていたはずなのに。
今、俺は。
「あー。落ち着いて落ち着いて。大丈夫だよ、怖がらなくても」
何故か俺は、
目の前にいる真っ白な服を着た誰かと、面と向かって座っていた。
しかも、椅子に座っているような感覚なのに、
腰かけているはずの椅子は存在していない。
あたりを見渡しても、そこには、何もない空間が広がっている。
色、光そして影すらない空間に、俺らはいた。
「とりあえず落ち着いてほしいな。大丈夫だよ、何も心配することはないから」
俺は自分が今置かれている状況が一体何なのか全く理解できず、
あたりを見渡しても、
何もない空間という異常な空間が広がっているその事実に困惑し、
ただ目の前の人を見ているだけだった。
「ん?ちょっとは落ち着いたかな」
その人はそう言って笑うと、俺の右手を勝手に握ってきた。
「よろしくね。私は・・・そうだな、キミの世界だと天使と呼ばれている存在だよ」