【短編集】闇に潜む影
「・・・はぁ?」
「うん、キミが理解できないのはもっともだと思うけど、
私のことは上手く説明できないので、
とりあえず分かりやすいから天使ということで」
何を言っているんだ、コイツは。
あ、もしかして。
俺は夢を見ているのかもしれない。
そうだ、これは夢だ。
きっとすぐに目が覚める。
だから、少し我慢すれば。
「キミ、これは夢なんかじゃないからね」
俺の期待は呆気なく崩れ落ちた。
「・・・じゃあ何だって言うんですか。これが現実とでも言うんですか。
ありえないでしょう。色も、光も、影もない、腰かけているのに椅子もない。
これが夢じゃなくて何だっていうんですか」
俺は苛立った声でそう、“天使”に怒鳴りつけた。
一方の“天使”は、動じることなく涼しい顔をしたまま一言、こう答えた。
「現実、だよ」
“君たちの言葉でいえば”、そう付け加えて。