【短編集】闇に潜む影
「あ、ごめんね。まだきちんと説明してなかったね。
一応キミが今日の帰還予定者かどうかを確認してからじゃないと、
人違いだったら色々困るから」
呆然としている俺に構う事無くしゃべり続ける“天使”は、
手にした紙とペンに何かを書き記した。
すると、その瞬間、紙とペンはその場で消えてしまった。
「さーてと。それでは改めまして、古田耕一君。
私はキミの天国への帰還を手伝う天使なので、よろしくね」
俺は何を言うべきなのか、
言葉すら見つからなかった。
どうして良いのかわからない俺は、
ただその“天使”を見つめ続けていた。
「キミはさっき死んじゃったんだよね。
それで、キミはまだ子どもだから、天国には無条件で入れることになっている。
だけどね、最近天国も飽和状態でさ。
この頃は、前より下界に戻す魂も増やしてはいるんだけどねー」
弾丸のように飛び出てくるその一言一言が、俺にはまず理解不能だった。
そもそも目の前にいる氏名不詳者の正体すらわからないのに、
俺は今、ソイツが言っていることをどう理解して良いのか。
まず、そもそも今自分がいる場所から理解する必要があった。