【短編集】闇に潜む影
「この女!お前なんか・・・!?」
そう言うが早いか、私の手は前に伸びていた。
そして、彼女の長くて艶やかな髪を思い切り引っ張った。
「きゃっ!」
突然の引力に、彼女はバランスを崩してその場に座り込む。
私は急いで彼女の前へ回り込んだ。
「女優は顔が命なんでしょう?」
彼女の瞳に映った、にやり、と笑う私の顔は、10年前と同じ。
彼女の上に立って、見下ろしていた時のあの頃。
楽しくて仕方がなかった、あの頃。
覗きこんだその顔は、人形のように美しい。
まがい物でも何でもないその顔に、私は憎しみを覚えた。
私は赤く塗った長い爪を立て、彼女の顔をめがけて勢いよく伸ばした。
「アンタなんか・・・、アンタさえいなければっ!?」
力の限り、私は叫んでいた。