【短編集】闇に潜む影
「やめて!誰か助けて!」
彼女の透き通る、大きな叫び声。
その瞬間、私は後ろから手首を掴まれた。
「やめろ!」
必死になって手を伸ばそうとする。
しかし、私の爪は彼女の血で赤くはなっていなかった。
「放してよ!この女が悪いのよ!」
私は振り向いて、後ろの男を睨みつけた。
「お前、おい、誰か!助けてくれ!」
その男が、暴れる私の手をぐい、と引っ張る。
私は思い切ってその手を引き離し、その場を走り去った。
「アンタなんか、アンタなんかいなくなれば良いんだよ!」
私の叫び声は、
むなしく長い廊下に響き渡っていた。