【短編集】闇に潜む影
「・・・あの女、・・・あの女!」
私は、トイレの個室でドアを蹴りつけていた。
がん、がん、と響く音が、ますます私の怒りに火をつける。
「本当に、・・・本当に!・・・死ねよ!」
そう叫んで蹴った瞬間、ドアが思いきり開いてしまった。
すると、近くに誰かがいたのか、恐る恐る誰かが声をかけてきた。
「あの・・・。そろそろお掃除させていただきたいのですが・・・」
個室から出ると、そこには作業着のようなものをきた、掃除係りの人間がいた。
大したことのない女が、私に話しかけてくる。
気安く話しかける資格なんて、この女にはないのに!
「なんなのよ!あんたは!掃除する人間が私に話しかける資格なんてないのよ!」
私はその女を両手で押し倒した。
女はそのまま後ろに倒れていく。
ムカつく。
ムカつく。
ムカつく。
何故、私が頂点に立てないの。
私より上に、人が立って良いはずがないのに。
あの女は、勝手に私より上だと、そう思い込んで、私に見せつけてきた。
最低なあの女が、有名人気女優なんて、許せない。