【短編集】闇に潜む影
「とっととどけよ!邪魔なんだよ」
私は倒れているその女を蹴りつけ、ヒールでその足を踏みつけると、トイレを出た。
高級ブランドのマークが入ったおろし立ての鞄の取っ手をぎゅ、と握りしめる。
わなわなと震えるこぶしに滲む汗が、布の鞄に染み込んでいく。
今度こそ、
今度こそ、
あの存在を消してやる!
そして、あの女を突き落して、私が今度こそ上に立つ!
私は自分の両手広げ、掌を眺めた。
この手で、
10年前、あの女が私にしたことを、
そっくりそのまま返してやる。
・・・私は、あの女と違って、失敗なんかしない。
あの時手加減したことを、後悔させてやる。
もう一度、彼女のいるであろう場所へ向かって歩き出す。
後ろから、複数の足音がするのに、気が付かないで。
第2話 Fin.