【短編集】闇に潜む影
家に帰ると、とっくに次の日になっている。
狭くて暗いアパート。
電気をつけると、
居間のテーブルには、広告やら手紙やらが散乱した中に、
ジュースの入ったコップが1つ置かれていた。
私が使った覚えはない。
恐らく、「それ」が使ったのだろう。
「それ」は、どうやらテレビを見ていたようだが、
私の足音に気がつくと、テーブルへと急いで駆け寄ってくる。
「・・・ちょっと」
私が声をかけると、その場で立ち止まり、
びくっと肩を震わせ、おそるおそる私の方を振り向く。
機嫌を取るような上目づかいが、私の怒りに油を注ぐ。
今日に限って、派遣されているテレビ局のトイレで掃除をしていたら、
見知らぬ女に何故か押し倒され、何度も蹴られた。
こっちは何もしていないのに。
それ以来、今日は一日中イライラしている。
それなのに、家に帰れば、「これ」がいる。
それを考えるだけで、私のイライラはどんどんどんどんエスカレートして、
私の心が休まる暇はない。