【短編集】闇に潜む影
「なんでテーブルの上片付けとかないのよ!朝片付けておくようにいったでしょ!」
部屋中に響き渡る私の怒鳴り声。
隣近所のことなんて気にしていられるほど心に余裕なんてない。
私は「これ」の胸ぐらをつかむ。
「これ」は瞬間的に肩をすくめ、目を閉じた。
ところどころにできた傷の跡。
治療もろくにしていないから、跡がある。
そのくせに、私に何も言ってこない。
それが、気に入らなかった。
「子供」のくせに、抵抗すらしようとしない。
泣きもしない。
妙に大人しい、人形のような「私のこども」。
昔から付き合っている彼氏との「もの」。
気が付けばお腹にいて、お金のない私は堕すことすらできずにいた。
彼氏は「自分の子供じゃない」といってしらを切り続けている。
そして、気が付けば生まれていた。
勝手に生まれてきた。
生まれて良いなんて、誰も言っていないのに。