【短編集】闇に潜む影
ある日。
教室で本を読んでいると、突然机の周りを囲まれた。
「ちょっと、トイレに来てくれない?」
クラスの中心的な女子生徒と、その取り巻き数人に囲まれた。
最近は、クラスメイトたちから暴力を振るわれるようになっていた。
最初は小突かれたり、背中を押されたり、その程度だった。
だけど、それは次第にエスカレートしていき、
休み時間には私をめがけてチョークが飛ばされたり、
上履きで頭を叩かれたり、階段の踊り場で突き落されたりした。
犯人は、おそらく、私を今取り囲む人たちの真ん中にいて、
私の前で腕を組みながら笑っている彼女だった。
目立ちたがりで、見栄っ張りな彼女は、
しもべを従えて、いつも楽しそうに私を見ている。
彼女のしもべにいじめられる私を見る目は、
好奇の色に染まっていた。
「・・・」
私が答えないでいると、彼女が私の机を思い切りたたいた。
「返事は?」
答えなければ、きっと従うまでこれを続けてくる。
そしてどんどんエスカレートしていくだろう。
私は観念した。
「・・・はい」
「聞こえないんだけど」
「・・・はい」
「さっさと立ちなよ」
私は言われるがままに席を立ち、
彼女たちに囲まれるようにして、その階の女子トイレに連れて行かれた。