【短編集】闇に潜む影
「ねぇ。いつまで私をこんな所に閉じ込めておくの?」
目の前の刑事は、素っ気なく答えた。
「刑期が終わるまでだよ」
私はそれに対して、鼻で笑った。
「私の彼は政治家なのよ。そんな態度で良いの?」
しかし、刑事は淡々と何かを書くだけだった。
「だから何だ。お前がやったことと何の関係がある」
男はそう反論してきた。
何よ。
男のくせに。
女の蜜が無ければ、生きていけないくせに。
「・・・別に、私は悪い事なんてしていないし」
「はぁ?」
男は、眉をひそめた。
私は、淡々と言葉を続ける。
「悪いのは、『あれ』。私じゃない」
取り調べ室の窓から見える月が、いつも以上に綺麗だった。