【短編集】闇に潜む影

「・・・警部補、取調べ、お疲れ様です」


警察署のある一室に、二人の男が戻ってきた。


そして、若い男が、目の前に座る中年の男性に会釈をした。


「あぁ、お疲れ」


男は片手に、冷え切ったコーヒーの入ったコップを持って、何か作業を始める。


「警部補。・・・あの被疑者、明日も取り調べしますよね」


「あぁ。でもまぁ明日は検察の方に送致しないといけないからなぁ。


恐らく勾留されるだろうから、これからどんどん絞っていけば良い」


「はい」


若い男はそう返事をすると、少し不機嫌そうな表情を浮かべた。


「俺、・・・あの被疑者と同い年なんですよ」


「そうか。お前も23歳か」


「はい。


・・・ということは、あの被疑者は17歳で子供を産んでいるってことですよね」


「そういうことになるなぁ。あの女が言うにはなぁ。


これから戸籍とって調べるけど」


「俺、信じられないです。


子供を虐待し続けた挙句、・・・あんなことをさせるなんて」


「まだ決まったわけじゃない。勝手に先入観を持つな」


「でも、決まったにも等しいですよ!


だって、だって、6歳の女の子が、


・・・6歳の女の子が、ビルの屋上から飛び降りようとなんてしますか!?


普通だったら考えられないでしょう!?


そんなの、あの母親が娘を唆したに違いないですよ!」


< 56 / 171 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop