【短編集】闇に潜む影
「・・・警部補、取調べ、お疲れ様です」
警察署のある一室に、二人の男が戻ってきた。
そして、若い男が、目の前に座る中年の男性に会釈をした。
「あぁ、お疲れ」
男は片手に、冷え切ったコーヒーの入ったコップを持って、何か作業を始める。
「警部補。・・・あの被疑者、明日も取り調べしますよね」
「あぁ。でもまぁ明日は検察の方に送致しないといけないからなぁ。
恐らく勾留されるだろうから、これからどんどん絞っていけば良い」
「はい」
若い男はそう返事をすると、少し不機嫌そうな表情を浮かべた。
「俺、・・・あの被疑者と同い年なんですよ」
「そうか。お前も23歳か」
「はい。
・・・ということは、あの被疑者は17歳で子供を産んでいるってことですよね」
「そういうことになるなぁ。あの女が言うにはなぁ。
これから戸籍とって調べるけど」
「俺、信じられないです。
子供を虐待し続けた挙句、・・・あんなことをさせるなんて」
「まだ決まったわけじゃない。勝手に先入観を持つな」
「でも、決まったにも等しいですよ!
だって、だって、6歳の女の子が、
・・・6歳の女の子が、ビルの屋上から飛び降りようとなんてしますか!?
普通だったら考えられないでしょう!?
そんなの、あの母親が娘を唆したに違いないですよ!」