【短編集】闇に潜む影
「バカみたい」
「とっとと早くやんなよ、ねぇ」
誰の声か分からない。
でも、誰かの声が、そう頭の中で響く。
「バカミタイ」
私は、この瞬間に気が付いた。
いじめなんてくだらない。
だから、くだらないことに対して何も感情を有してないのだと、
私は考えていた。
でも、それはただの勘違いだった。
私は無意識のうちに作り出していた。
闇に覆われた、何も見えない空間を。
その中で響き続ける、私を蔑視する言葉。
バカ。
キモい。
クサい。
あっち行けよ。
消えちまえ。
私が何をしたというのだろう。
私が何をするというのだろう。
その疑問がぐるぐると私の頭の中を駆け巡ると、
それは何かにぶつかった。
そして、その瞬間、何かが、私の頭の中で切れた。
暗闇で覆われていた、見えていなかった全てが露わになった。
今までの、バカバカしい思い出が、抱き続けていた疑問とともに、
一気に私の頭の中でぐるぐる回りだす。
それと同時に、体中の血が逆流していく感覚が走った。
「・・・よ」