【短編集】闇に潜む影
次の日の朝早く、僕は彼女のクラスの教室の前で彼女を待った。
待って、待って、待ち続けた。
授業5分前、彼女はようやくやって来た。
何人もの男を連れて。
僕が彼女の名前を呼んで近づこうとすると、
それを邪魔するかのように、そいつらは、僕を取り囲んで、こう言った。
「お前、ウザいんだよ。こいつに付きまとうなよ」
「こいつは俺の彼女。手を出すなよ」
そう言い放った男は、昨日、彼女と手を繋いでいた奴だった。
そうか、こいつか。
こいつが、蛇か。
僕は、彼女の姿を探した。
男達の後ろで、僕を見る彼女と目が合う。
目を覚ませ。
君は、蛇に騙されているだけなんだ。
僕は彼女にそう語りかけるように、視線を送った。
だけど、
こちらを眺めている彼女の目は、
今まで見たことないくらいに冷たかった。
君は、
なぜ、蛇の誘惑に乗ってしまったの?
蛇が与えたその知恵の実は、君を堕落させてしまうのだよ。
なぜ楽園から出ていこうとするの?
君が向かおうとするその世界は、楽園には程遠い、そんな世界だよ。
いいよ。
待っていて。
僕が君を救い出してあげる。