【短編集】闇に潜む影
「・・・え、・・・なんで?」
玄関のドアを開けて出てきた彼女の顔は、引きつっていた。
あぁ、君はまだ騙されているんだね。
隣に立つ男は、蛇なんだよ。
「君は、・・・何故誘惑に負けてしまったの?」
空は、赤く染まっていた。
心をざわつかせるその色は、益々深みを帯びていく。
「お前、朝も言っただろ。彼女にまとわりつくなよ」
人間の形をしているけど、これは偽りの姿。
本当は、蛇が、ちろちろと舌を出して僕を睨み付けている。
「なぜ君は、彼女を楽園から追放させようとするの?」
「はぁ?」
蛇は、口を開け僕を威嚇し始めた。
僕は、彼女を心配させまいと微笑みかけた。
そして、バックから、“それ”を取り出した。
楽園に戻っておいで。
蛇の誘惑になんか、負けちゃだめだよ。
でも、君がそれでも僕の言うことを聞けないほど、蛇に騙されているのなら。
僕は、力づくで君を楽園に連れ戻す。