夏に溺れかけた恋

（チリンチリン）扉の音が変わる

（チリンチリン）扉の音が変わる
注釈（フミヨが無言で店に入ってくる。）
ヒロミ「噂をすれば、・・来たわよ。」
注釈（ヒロミとフミヨは、ヒソヒソと打ち合わせを始めたので、栗矢は黙って自分でビールをコップに注ぎ、一気に飲み干した。）
注釈（カウンターの中に入ったフミヨは、栗矢の前に立った。）
フミヨ「わー、すごい一気に飲んだ。」
注釈（栗矢が黙ったまま、ビール瓶を持って前に差し出すと、フミヨはキョトンとした顔で栗矢の顔を見た。）
ママよう子「いらっしゃいませ。本日はようこそ当店へ、お越し下さいました。」
注釈（いつの間にか、ママよう子が奥から現れ丁寧に挨拶をした。）
ママよう子「おビール、いただきます。あなたも頂きなさぁい。」
注釈（ママよう子は、丁寧な挨拶の後は、いつものチャメッケな話しぶりに変わった。）
フミヨ「ハーイ。」
ママよう子「今度入った富美ちゃん、よろしくお願いね。」
栗矢「クリヤと言います。」
注釈（ママよう子がビールを飲み干したころに、室田が店に現れた。）
（チリリン）扉の開く音
ママよう子「いらっしゃいませ、お連れさんがいらしゃってますよ。」
室田「あれぇ、あの時の人。」
フミヨ「いらっしゃいませ。」
フミヨ「あの時、マナミと話しをしていたでしょう。海に行った時、近くにいたって聞きました。私はちっとも知らなかった。」
室田「そうだよ、栗矢と一緒にいたさ。」
フミヨ「えっ、栗矢さんもいたの？ちっとも気が付かなかった。」
室田「気が付かなかったの、栗矢お前は影が薄いなぁ、あんなに近くにいたのになぁ。」
注釈（室田の最後の言葉を聞かずに、フミヨは奥に引っ込んでしまった。その為、栗矢の事は聞かずじまいになった。）