夏に溺れかけた恋

栗矢「そうだったな、そっちがあるから大変

栗矢「そうだったな、そっちがあるから大変だな、実家とか親戚は大丈夫か?」
室田「オフクロには随分言われたよ、もうこんな事で、頭をさげないからって。」
栗矢「そうだよな、出来た後だからな。」
室田「親戚は今からだけど、マナの家は驚くだろうな、医者とか代議士とかが集まると、田舎の人は何事かと思うだろうよ。」
ママよう子「どうしたの、医者とか代議士とか言っているけど、栗ちゃん、ネッネッ。」
注釈(ママよう子が空のコップを持って、ビールの催促をしている)
栗矢「どうしたのママ、コップはもう貰ったけど。」
室田「ママも欲しいいのさ、俺が灼するよはいママ、無くなったら次も栗矢の伝票に付けといて。」
栗矢「おいおい、おまえもビールぐらい注文しろよ。」
「室ナレーション田が隠していた旧華族の家柄を、結婚という形で明らかにした。元華族といっても華やかだったのは、早くに亡くなった父親の教煕の代までだ。今は普通のサラリーマンの家になっていたが、父親の兄弟や親戚筋は、まだ在命しており資産家として医者や政治家になっていた。それでも室田の家は、先祖の直系の家柄として、よく引き立てられていた。」

注釈(場面は変わり、栗田とフミヨは結婚式場でウエディングドレスのマナミと、真っ白なスーツの室田に挨拶を済まし、列席した友人達とも分かれて、二人で歩いていた。)
フミヨ「マナミ、幸せそうだった。私もあんな風にできるかなぁ。幸せに・・・」
栗矢「ああ、綺麗だったね、富美ちゃんもきっと幸せになれるよ。あれ以上にね。」
フミヨ「あれ以上に?誰がしてくれるの?」
注釈(道が少し開けた場所にきて、人通りがなくなり二人だけの空間になった。)
栗矢「きっとなれるさ、そのときは僕が、」
フミヨ「私、今から寄るところがあるの、悪いけど此処で失礼する。今度電話するから、その時にまた話そう。」
栗矢「わかった電話して。」
ナレーション「フミヨは、栗矢の話しを遮るようにして、その場から立ち去ろうとタクシーを止めた。」
フミヨ「まっすぐ行って。」
注釈(タクシーに乗車してすぐに、フミヨは行き先をつげて、タクシーはそのまま走り出した。)
フミヨ「運転手さん、市民病院に行ってください。」


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