夏に溺れかけた恋

フミヨ「ヒーキャー」

フミヨ「ヒーキャー」
栗矢「早く、テーブルの下に潜るんだ!!」
フミヨ「ドーナルノ、怖い、イヤー!」
注釈(フミヨは恐怖のあまり栗矢の体を捕まえてしがみついた)
栗矢「しっかり僕に捕まって!!」
注釈(周りのお客が店の外に飛び出した。テーブルの下に、潜り込んだ人もいた。栗矢はフミヨの身体をかばように、自分の身体で覆い被さった。)
ナレーション(フミヨは恐怖の中で、初めて栗矢の体に触れた、その息づかいがすぐすぐそばで感じられて、地震よりもフミヨの胸はドキドキと高鳴っていた。)
注釈(棚や机が勝手に動き出して、それが倒れた瞬間に、何かが栗矢にめがけて飛んできた。)
(ドンガタン、ヒュイヒュイ、バンドス)
栗矢「ウグッ」
注釈(最後の嗚咽のような声が聞えた、そのあと地震は静かに治まっていた。)
フミヨ「揺れが停まったようね、ねえ栗さんウーン重い。」
注釈(フミヨは、覆い被さった栗矢の体を仰向けにして、やっと起き上がった。彼の意識が無い事に気づいて、大声で叫んだ。)
フミヨ「栗さん?栗矢さん?誰か来て!!
栗さん栗さん!!」
注釈(誰かが駆け付けつる靴音がした。サイレンの音がして救急車が走っていく。)
注釈(場面が変わり、病院の待合い所で、フミヨとマナミが話しをしている。室田は栗矢の実家に連絡を取っている。)
フミヨ「突然だったから、怖かった。」
マナミ「富美ちゃんの家は大丈夫なの?」
フミヨ「うん大丈夫みたい、お店のグラスが落ちたくらいで、たいした事は無かったらしい。あんたの方は、お腹の赤ちゃんは?」
マナミ「大丈夫よ、思ったほど変わらなかった。」
室田「連絡ついたよ、向こうもテレビのニュースを見て心配していたんだって、急いで来るそうだ。だけど様態の方が心配だな、まだ意識は戻らないのか?」
フミヨ「見に行ってみようか?」
マナミ「そうね、私たち、もう一度ようすを見て帰ろうかしら。」
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