華龍


後ろから低い声が聞こえて来た。


あたしはその声に歩みを止め、振り返った。


“俺は…白―――…”


“あたしは“華龍”の16代目総長、“鬼龍””


狼は自分より先に名乗ったあたしに驚いたのか、ずっとあたしを見てる。


“喧嘩は何か守りたいものがある時だけにしな。意味のない喧嘩なんかすんじゃないよ”


あたしはそう言って狼に微笑んでからその場を後にした。




あたしは守りたいものがあればいつ何どきだってこの手を赤く染めた。


その時は自分の手を汚す事に何も感じていなかった。


だけどあたしにはもう守るものがなくなった。


それから気づいたんだ。あたしがどれだけ自分自身を汚してきたのかを。



ねぇ、アンタはさ、今の喧嘩してないあたしか、昔の喧嘩ばっかしてたあたし、どっちが良い?


あたしは―――…


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