華龍
そう言ってあたしの前を歩きだした。
あたしはその爽メンくんの後ろをついて行く。
するとさっきまで感じてた冷たい視線が一気になくなった。
何で?この爽メンくんが来た途端、視線が消えた。
…この人何者?
「そういや、君名前何て言うの?」
爽メンくんが前を向いて歩いたままそう尋ねてきた。
「梨空」
「梨空ちゃんか。俺は颯(そう)。このまま行くと同じクラスだろうからこれから宜しく」
そう言って颯は階段をのぼりはじめた。あたしは颯の後ろに続く。
二階に近づくにつれて一階とは比べ物にならないくらい雰囲気がガラリと変わった。
壁には無数の落書き。窓ガラスは割れてる。
酷いな、これは。一階なんて新しい校舎みたいに綺麗だったのに。
「梨空ちゃん、ここが二年B組」
そう言われ、たどり着いたのは教室のドアなんてものはなくて、廊下や壁に落書きがたくさんしてある場所だった。
煙草吸ってたり、お酒飲んだりしてる。
…本当に高校生か?
「中、入ろう」
そう言って颯はあたしの腕を引いて教室に入った。
するとその瞬間、騒がしかった教室内が一気に静まりかえり、皆の視線が一斉にあたしに向けられた。
そして颯はある一人の男の目の前で立ち止まった。
その男は金髪のウルフヘアで煙草を吸ってる。