華龍


そしてその男子はあたしの目の前まで来ると、あたしの胸倉を掴んだ。


「おい、テメェ言ってくれるじゃねぇか」


「……」


「俺らがいつ何どき女を襲おうと関係ねぇだろ」


「そうだね」


「お前もそのうち襲われるぞ」


「襲われないよ」


「あ?」


あたしがそう言うと男子はあたしに眼をとばしてきた。


「ねぇ、離して?その薄汚い手であたしに触れないで」


「んだと?!」


「離して」


「上等だ、ゴラァ!」


そう言いながら男子は右手であたしの頬を殴ろうとした。


だけどあたしはその拳をかわしてそのまま男子の右腕を掴んだ。


「…っ!」


「離せっつってんだろ」


あたしが低い声でそう言うと男子は大きく目を見開いた。


「何でもかんでも拳任せにしてんじゃねぇよ」


あたしが一発かますと男はあたしからゆっくりと離れた。


あたしは崩れた襟を直した。


「おい、梨空とか言ったか」


突然、聖と言う人が口を開いた。
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