Look ON!
◆萎れかけた白い薔薇を赤く黒く染める
ガタンっと響いたドアの開く音とともに爽やかな男物の香水がただよう……
「華南っ!」
時刻は午前5時46分。
あと数十分もすれば朝日がのぼるだろう。
常識的にはまだ布団の中にいてもいい、そんな時間帯に木霊す声はあきらかに……
うるさかった。
眠気覚ましの珈琲も残り少なくなり、そろそろ淹れなおそうと思っていた水城 華南。
ドカドカと自分の方へ近づいてくる足音の主にぼやいた言葉は「耳がつぶれる」の一言だった。
一方そんな言葉で黙る人間ではないのが中嶋 靖也という男である。
「5時に下や言うたやろ!」
「……あぁ、悪い」
「お前なぁ」
「もう、えぇわ」とため息混じりにそう言ったあと、靖也は身近にあった椅子に腰掛けた。
そして、暗いベージュのジャケットのポケットから煙草を取り出す。
スラリと伸びた足をサッと組み、軽くくわえた煙草に火をともす。
そんな何気ない仕草ですら、靖也がするとどこか気品ただよう絵のように見えた。
ふあぁ、と一つこぼれた欠伸で歪んだ表情までもが、綺麗だった。
「だから嫌やねん……」
人を待たすんが特技なお前とペアなんは。と、横目で華南をにらみながら靖也は煙を吐いた。
そして「じゃぁ組まなきゃ良いだろ」という華南の言い分に顔を引きひきつらせる。
「それが出来たら苦労せんわ」
「仕方ないんじゃないか?」
_
「華南っ!」
時刻は午前5時46分。
あと数十分もすれば朝日がのぼるだろう。
常識的にはまだ布団の中にいてもいい、そんな時間帯に木霊す声はあきらかに……
うるさかった。
眠気覚ましの珈琲も残り少なくなり、そろそろ淹れなおそうと思っていた水城 華南。
ドカドカと自分の方へ近づいてくる足音の主にぼやいた言葉は「耳がつぶれる」の一言だった。
一方そんな言葉で黙る人間ではないのが中嶋 靖也という男である。
「5時に下や言うたやろ!」
「……あぁ、悪い」
「お前なぁ」
「もう、えぇわ」とため息混じりにそう言ったあと、靖也は身近にあった椅子に腰掛けた。
そして、暗いベージュのジャケットのポケットから煙草を取り出す。
スラリと伸びた足をサッと組み、軽くくわえた煙草に火をともす。
そんな何気ない仕草ですら、靖也がするとどこか気品ただよう絵のように見えた。
ふあぁ、と一つこぼれた欠伸で歪んだ表情までもが、綺麗だった。
「だから嫌やねん……」
人を待たすんが特技なお前とペアなんは。と、横目で華南をにらみながら靖也は煙を吐いた。
そして「じゃぁ組まなきゃ良いだろ」という華南の言い分に顔を引きひきつらせる。
「それが出来たら苦労せんわ」
「仕方ないんじゃないか?」
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