Look ON!
こっちを見ろとばかりに靖也の前に立った華南は柄にもなく大きな声で怒鳴りつけた。
仁王立ちで両手のひらをきつく握り締め、唇も少しかんでいる。
「でっかい声出すなや……皆びびってるやろ」と、資料を閉じた靖也は一度だけ華南を見てその後はロビーを見回す。

確かに側にいて状況を分かっているもの以外は唖然として、ロビーの隅であるこの場所を見つめていた。
朝会った蓮でさえ、話し込むのをやめて華南を見ていた。

「けどお前がっ!」
「分かった……勝手にせぇや」

立ち上がって華南の肩を押して目の前から退けた靖也は一人足早にロビーを去っていった。
「また詳しいこと決まったら連絡回してくださいねー局長」
そう、言い残して。

「靖也のヤツ、今日はめずらしく機嫌悪いな……何かあったのか?」

エレベーターの扉が閉まり完全に姿の見えなくなった靖也をまだ目で追いながら要は華南に尋ねた。
力の入ったままの右手が痺れかけていることも忘れて華南は今日の任務後に起こったことを説明した。
話し終わった頃には要と華南の姿しかソコには残っていなかったのだが……

「新車を壊されたからって訳じゃなさそうか……」
「まったく、ペアを組んでる私の身にもなってほしい」
「まーアイツもたまには溜めてるもん、吐き出したくなるんだろうよ」

いい迷惑だ。と、華南は要に愚痴りながらため息をこぼした。
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