さもありなん
「へ?」

「僕も、危ないかもしれないなぁ」

顔を上げれば、
頭からぽたぽたと雫を垂らしてシャツを搾る男の人が立っていて、
突然掛けられた声に目を丸くする。

「酷いですよね、雨。嫌いなんです」

そんな私の表情を気にした様子も無く、
バケツをひっくり返したような雨に彼が眉をしかめる。

「…私は、好きですよ」

「そんなに濡れてるのに?」

「……まぁ、この年になって雨の中歩くのもあんまり無いので、いい言い訳かなって」

「あはは、確かにそうかもしれませんね。
あ、良かったこれは濡れてない」

これ、良かったら食べません?と彼が持っていた赤い紙袋の包みを指す。

「大丈夫ですよ、濡れてませんし、潰れてません。雨の中死守してきたので。
お陰で僕はずぶ濡れですけど」

はい、と袋から出されたのはセロファンに包まれた塩大福で、その不自然さに思わず声を出して笑ってしまった。










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