さもありなん
春が嫌い、の言葉にうーん、と首を傾けると、楽しそうに笑いながら彼女が、薄い茶色のヒールの高い、自分にとっては繊細な、凛とした雰囲気のある靴を平然と飛ばす。
繊細なはずのその靴は、飛ばされた後、力無く砂の上に横たわっていた。

「…僕は、好きですけどね」

その靴を拾いに行こうとすると、ジャングルジムの上から「あ、待って」と声が聞こえた。

次の瞬間砂の上に転がった靴は二つになっていた。

何をしているんだ、と振り向けば、彼女は面白そうに笑いながら黒いタイツを履いただけの脚をブラブラさせてほぅ、と満足げに息を吐いた。

「平和が嫌いって言うんじゃないけれど、もっと面白そうな事が始まりそうな空気にドキドキするタイプで」

「夏祭りの夜とか?」

「ウンウ」

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