さもありなん
「…美味しい」
「良かったです。一人分にしては買い過ぎてしまったので」
ほら、と見せられたくしゃくしゃになってしまった赤い袋の中には、
塩大福の他にも、柏餅が何個か狭そうに転がっていた。
「…誰かへのお土産?」
「いえ、一人分ですよ」
「……これを一人で?」
「甘いものが好きなんですが、特にこの店ではいつも買い過ぎてしまって…」
「ふふ」
「あぁ、電車来ましたね」
線路の先に見える明かりに彼が立ち上がる。
「ねえ!」
今思えば、あの時雨が降ってくれていて、
本当に良かったと思う。
「この大福の店、今度連れて行って」
駅に時々ある出店じゃない、
この店がどこにあるかは本当は知っていた。
でも、
ここで別れてしまうにはあまりに寂しくて。
思わず出た私の言葉に、
最初は少し驚いた表情を見せた後、
彼はにっこりと笑った。
「喜んで」